斉藤裕之 展 ー 平熱日記 in丸亀 ー

2024年 5 月 25 日(土)〜 6 月 16 日(日)

水曜~日曜 : 11:00 ~17:00
展覧会最終日: 11:00 ~16:00

休 廊 : 月曜、火曜

作家在廊:5月25日(土)、26日 (日) 
お気軽にお越しください。

斉藤裕之展 - 平熱日記 in丸亀 ー

あーとらんど ギャラリーギャラリーでは、斉藤裕之さんの個展を5月25日から6月16日まで開催いたします。この展覧会では、斉藤氏が日々の暮らしや身の回りの出来事を通じて描く「平熱日記」の世界をご紹介いたします。

展覧会概要
* 期間: 2024年5月25日(土)から6月16日(日)
* 営業: 水曜日から日曜日、11:00から17:00まで(最終日は16:00まで)
* 休館日: 月曜日、火曜日 * 作家在廊: 5月25日(土)、26日(日)

斉藤裕之さんは1961年に山口県で生まれ、東京藝術大学で学んだ後、フランス政府の給費制度を得てパリ国立美術学校に留学しました。その後、東京を拠点に作品制作を続けながら、幅広く展示を行ってきました。彼の作品は、日常の風景や小さな出来事をモチーフに、漆喰や金網などの身近な素材を用いて独自の世界を表現しています。

斉藤さんの作品は、言葉を超えた感覚として捉えられる繊細さと、日常の風景に潜む普遍的な美しさが特徴です。彼の制作過程には、日々の生活から得たインスピレーションや、素材そのものが持つ可能性への探究が反映されています。

この個展では、斉藤さんが「平熱のままに。日記のように・・・。」描き続けてきた作品群を通じて、私たちの日常や身近な風景が持つ普遍性と美しさを再発見する機会を提供します。ぜひ、この機会にご来場いただき、斉藤氏の作品が紡ぐ世界に触れ、新たな発見と感動を体験してください。

斉藤裕之

1961 山口県生まれ
1991 G-ART GALLERY(東京)、GALLERY Q(東京)
1992 フランス政府給費制としてパリ国立美術学校に留学
1993 GALERIE BERNANOS(パリ)('94)二人展
1995 東京芸術大学博士課程満期退学
1997 GALERIE SOL(東京)
1999 GALERIE SOL(東京)、セゾンアートプログラム21×21 ギャラリー21+葉
2000 SPICA MUSEUM(東京)
2001 GALERIE SOL(東京)
2010 平熱日記展 タカシサイトウギャラリー(茨城)2021まで毎年
2023 平熱日記 in 千曲 art cocoon みらい(長野)

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斉藤裕之  平熱日記について

二十年ほど前に大工の弟が我が家を建てた。私も手伝った。新興住宅地に現れた木造の家。私は妻の求めに応えて吹き抜けの階段脇の壁に漆喰を塗った。その時余った漆喰を小さな木のかけらに塗ってフレスコの風の絵を描いてみた。前後して美術雑誌や展覧会を見なくなった。美術の用語を使わないようにした。現代とかアートとか空間とか・・・。制作も描写もしない、キャンバスに絵を描くことも大きな画面に向かうこともやめた。漆喰にただ「絵」を描こうと思った。それから毎朝絵を描いた。

ある日古いハエたたきを見つけた。錆びた金網の部分を切り取って漆喰を塗って絵を描いてみた。金網と漆喰がそれぞれを支えあっていてはかなさと美しさを感じた。絵を描いた後でチョキチョキと切って大きさや形を変えられるのも面白かった。机の上には描きかけの小さな絵がいっぱい並ぶようになった。誰かに見せるつもりで描いていたわけではなかったのだけれども、そそのかされて小さな個展を開いた。私の描く絵を見て、ある人はノスタルジーだといい、ある人は俳句のようだといった。私は日々の暮らしや身の回りのちょっとした出来事を描く。平熱のままに。日記のように・・・。

コロナのこともあってうちに絵を描きに来ていた子供たちの声は今はもうない。私は子供たちが使うはずだった残された紙粘土で小さな我が家をこさえて色を塗った。それからそれを絵に描いてみた。サイディングで覆われた家々の中にあって、杉の外壁の我が家だけが長い間の風雪によって地面に近い風合いとなっていた。この紙粘土シリーズ?は結構面白かったので古い小学校や電車、友人の家なんかも作って描いてみた。

昨年、六十を超えて初めて四国の地を踏んだ。私の生まれ育ったところから天気の良い日は四国が見えるというのに。海の上に架かる橋から見える島々は私の知っている瀬戸内のそれとは違った景色に見えた。私は紙粘土で古い灯台をこさえて描くことにした。

(2024年2月 斉藤裕之)