美術家テキスト
四国には森林が多く、吉野川や仁淀川など日本有数の一級河川があり、古くから各地で手漉き和紙の文化が発展してきた。 その滑らかさや美しさに魅了され、「切り絵」の手法を用いた美術作品を制作、発表を続けている。
2016年頃から、「その場所でしか生み出せないもの」「調和」をテーマに、作品と照明による空間全体を使ったインスタレーションを展開。 瀬戸内国際芸術祭や山なみ芸術祭への参加をきっかけに、地方各地それぞれの持つ歴史や風土、風俗を、美術を通して発信したいと考えるようになり、2022年秋に「夢食む」を発表。霊獣「獏」がモチーフであり、悪夢を食べることで有名だが、鉄や銅、武器をも食べるとされている。
人類の歴史は、常に「戦争」「災害」「疫病」に見舞われ続けてきた。医療が発展した現在においてもパンデミックが起こり、戦争がはじまり、世界は目まぐるしく変貌している。「獏」が創造された当時に思いを馳せると、平和や安らぎを望む人々の願いや念を具現化させたカタチであったのではないかと私は思う。 本展では、そのような民話、寓話をモチーフにした新作と共に自然や生き物をモチーフにした小作品を展示する。
2022年11月
長谷川隆子