私の表現について 門坂 流
「表現として絵を描き始めたのは鉛筆画が最初でした。装画の仕事の都合でペン画や水彩画と出会い、ようやく線が自分の感覚の表現に合致している事を確信しました。
ペン画集「風力の学派」を出版した頃から老眼になり始め、今までのような眼と手の運動の身体性が損なわれはじめ、壁を感じだした頃に銅版画に出会いました。
今回の個展の中心作品は、銅版にビュランという道具で直接線を刻みつける技法で「エングレーヴィング」と云い、15世紀にドイツで生まれアルブレヒト・デューラーが有名ですが、身近には紙幣がエングレーヴィングで制作されています。
銅版にビュランの稜の尖端を当て、版の内側に滑らかに入っていきます。仕事は緩やかに、時を刻み付ける感じで進めます。ビュランを持つ手はほとんど動かさず、押し当てる力の強弱と左手による版の回転で線刻します。
主題は常に流動している森羅万象で、そのリズムに眼と手を共鳴させ、出来る限り対象の観念を「無」にするように心をコントロールして、見えるがままに描き続けています。
■ 略 歴 1948 京都に生まれる 68 東京芸術大学油絵科入学 73 鉛筆・ペン画で創作活動を始め、主に書籍の装幀や雑誌の挿絵などグラフィック関係の仕事において、ドローイング作品を発表する。 85 この頃から、銅版画による線の表現に惹かれ、エングレーヴィングの技法を研究。 88 ドローイング集『風力の学派』(ぎょうせい)刊行。 90 『ビュランによる色彩銅版画集 水の光景』(ぎょうせい)刊行。 99 朝日新聞朝刊小説「百年の預言」の挿絵を担当、翌年記念画集を朝日新聞社より発行。 2003 小池真理子・著、門坂流・画、掌篇小説集『一角獣』角川書店 04 町田国際版画美術館 水のシリーズ全16点 買上 07 黒部市美術館から黒部の風景8点を依頼され制作。 07 A.D.A.F.A. (Cremona)版画2点収蔵。