山口佳茂  ーリアルを模索するー

私が絵画制作のための「手懸り、拠り所」として来た考えを思い返してみると、人に見ていただくことを意識して描いた初期の考えは、必然性や偶然性ということを念頭に幾何学的な作品制作をおこなっていた。その折、現代美術の巨匠、斎藤義重先生から陰影表現における曖昧性の問題が指摘され「一本の線だけで空間表現できないか。」と命題を投げ掛けられた。

「線」ということを考えて辿り着いたのが「間」という考えであった。物と物とのはざまで生まれる線を使って絵画制作へと取り組んだ。そうしていると平面と立体との境界ということに興味が移っていった。表と裏を同一平面上で感じさせたいと思うようになり、「織る」「編む」という布の存在を絵画にしようと考えた。 そして、何も無いから存在価値が生まれる「窓」。表と裏(内と外)の一体化でもある「窓」を絵画で表現したいと考えを発展させてきた。

最近では、細い糸がピンと張られた状態の空間の中にいるときや薄暗いトンネルの中から光がさす方向を眺めたときの空気感に心を震わされるものを感じている。その一瞬の感動を絵画で表現しようと試みている。
人にあたえる感動の気付きはどこに現れるのか。表面上の光の作用のなか、光を越えた本質の存在は何なのか。絵画上に凹凸を付けたり、パネルを組み合わせたすき間を絵の重要な要素として取り入れたりしながら、強い存在感を表現したいと取り組んでいる。

表面の微妙な変化に気付き、小さな発見から創造力が醸成され、人を動かす原動力が生まれる。絵画はそんなよりどころを人に気付かせる装置ではないだろうか。静かな1枚の絵の中の空気や光を見つめることで、瞑想(心の平静と内面の調和を保つために行われるトレーニング)の場と時間があたえられることを期待している。 

山口 佳茂 yamaguchi yoshishige

1961年 香川県生まれ/1984年 多摩美術大学絵画科卒/1986年 リュブリアナ芸術大学大学院修了/1995年 日本からの創造者たち展(スロベニア)/2008年 香川県美術展 県知事賞受賞(香川県立ミュージアム)/ 2013年やまなみ芸術祭 綾川町塩江町、以降(2016、2018、2020、2022)/2022年「山口佳茂展‐40年間の制作を見つめる」(まんのう町)/2023年 アートエコーまんのう山の小さな展覧会 以降(2024、2025)