テキスト 今村由男

絵画と言うものを言語で表わそうとすると、絵画の本質からはすでに乖離してしまいます。絵画はむしろ言語にはならない掴みようのない、たゆたうような感覚世界であるのでしょう。自然界の神秘に満ちた色彩や形には及ばないもののそれは人だからこそ感じることの出来る世界なのだと思います。

いつもの散歩コースに水神様を祭ったかつての水場があります。人が住みはじめてずっとこんこんと湧く泉だったのでしょうが近くに出来た新しい道路で水脈が変わっしまって?人々が集った水場はすっかり干上がり乾いた枡形だけが陽に晒されています。いとも簡単にあると思っていたものが無くなっていく。もっとも毎日見ている景色でさえも時計を早回しして過去に戻ったらまるで違う景色だったのだろうし、逆にこれから先に回したらどんな景色なのだろうか。膨張した太陽に飲み込まれるという地球、やがて潰れた太陽もブラックホールに飲み込まれると言う。あると思っているものは無いに等しい。

そこまで飛躍して考えなくても、日々の移ろいは人の生も草木の命の営みもなんら変わらない。忙しなく命の限りを生きつぎの世代につたえていく。命が躍動する春から夏の命の営みは眩しいほどに美しい。しかし齢を重ねて見えてくる美しはむしろ、枯れて縮れてそれでも花をつける草木に愛おしさを感じます。表現世界の見えて来る景色も齢と共に変わってきますが、枯れかけている水脈を辿るような表現に未だまだ敢然と向かわなければならない日々の幸せ。

今村由男  Imamura Yoshio

1948年 長野県生まれ/中林忠良氏に師事 日本版画協会会員
1991年 フランス、アトリエコントルポワンに留学、1版多色刷り銅版画研修
1997年 平成9年度文化庁特別派遣芸術家在外研修員として国費留学 パリ
2001年 スペインカダケス国際版画ビエンナーレ審査員
2008年 日本版画協会展A部門審査長
2011年 Asilah 市(モロッコ)アートフェスティバル招聘、滞在制作
2013年 韓国国際版画レジデンス(大田)招聘滞在製作
2017年 韓国南ソウル大学アートセンター招待 今村由男展
2018年 中国深圳Guanlan版画博物館 アーチストレジデンス招聘滞在

主な国際展、国内展・受賞
1987年 87年期待の新人作家大賞展/買上賞
1988年 第56回日本版画協会展/賞候補・準会員推挙
1989年 第4回ニューヨーク国際ミニアチュールプリントビエンナーレ展受賞
      第1回バラトヴァバン国際版画ビエンナーレ/特別賞
      第57回日本版画協会展/準会員賞
      第15回日仏現代美術展/佳作賞/フランスソワール賞2席90年も受賞
/ フィガロ賞3席90年も受賞
       第9回フレッヘン国際版画ビエンナーレ作品買上
      文化庁現代美術選抜展(日本巡回)
1991年 第17回日仏現代美術展/フランスソワール賞1席
      クラコウ国際版画トリエンナーレ(ポーランド)
1993年 第20回リュブリアナ国際版画ビエンナーレ
1994年 1994クラコウ国際版画トリエンナーレ(ポーランド)
1995年 パシフィックリム国際版画展/ハワイ州教育・芸術財団買上賞
      97年2000年も受賞
1996年 第64回日本版画協会展/準会員賞・会員推挙
      文化庁現代美術選抜展(日本巡回)
1998年 第3回フィンランド国際ミニプリント展/特別賞
2000年 第20回カダケス国際小版画展/受賞
2008年 ニュージーランドパシフィックリム国際版画展/審査員特別賞
2009年 ソウル空間国際版画ビエンナーレ/買上賞
      クロアチア、スプリト国際グラフィックアートビエンナーレ特別賞
2011年 ソウル空間国際版画ビエンナーレ 受賞
2011年 CWAJ 現代日本版画展第一回運営委員会賞
2017年 中国深圳Guanlan国際版画ビエンナーレ
2018年 クロアチア国際版画ビエンナーレ、スプリットグラッフィック グランプリ
2018年 Balna国際版画ビエンナーレ(ブルガリア)

他国内、国際版画コンクール多数入選
作品はアメリカ、イスラエル、ドイツなど世界20カ所以上の美術館に収蔵されている。