個展に寄せて 梶浦徳雄
「存在」というある種漠然とした事柄について知りたい、感じたいということが私の制作の基盤になっています。「ここは何処?」「私は誰?」といった素朴な疑問です。それらの理解や感覚が広がり、深まるにつれ私自身についてもより実感できているように思います。
「存在」について思考する上での重要な要素として「ma」を取り上げています。「ma」は日本の伝統的な概念「間」から派生した表記であり私にとってはいろいろな事物の関係性を意味します。「個」の特性、独自性は固定されたものではなく自身及び他の要素との関係性により確立されると考えています。様々な状況との関係により様々に変容します。
常に直進する光が重力により歪曲する、一定のリズムを刻む時間が速度との関係でそのリズムを変化させる等。また影響を与えた側にも何らかの変容が生じる。「個」が「個」でありながらその姿、内容、要素がそれぞれの関係性により異なっていくのは興味深いことです。
制作の過程で交わされるコミュニケーションにより互いに変容し成長や後退を繰り返す。そして生まれてくる何かに互いの「存在」を感じ取ることができる。つまり「ma」とは「存在」の内容を形作る構造と考えています。
私の表現の様式は決して固定されるものではなく、制作過程や思考の推移等により必然的に様々な姿になります。予感や予測そして必要、可能、不可能等いろいろな要素の中で生まれてきます。それらに如何に真摯に向き合えるか。
展示も制作の一環です。空間の状況や素材、またそれらに関わる人々等全ての関係により成り立ち、そこに何らかの新たな関係が作られる。作品を展示する事はその可能性や楽しさを与えてくれます。
梶浦徳雄 略歴 (Kajiura Norio)
1951年岡山生まれ 1970年東京藝術大学工芸科デザイン専攻入学 1975年同大学院油画技法材料研究室入学 修了後同研究室に研究生として在籍 1981~82年国立ウイーン美術大学彫刻科に留学
その間にヨーロッパ各地の美術事情、美術と社会の結びつきに触れその密接でスムーズなあり方に感銘を受け当地での活動を志す 1986年再渡墺しウイーン市に居住。1987年ウイーン市の画廊にて初の個展。その後ヨーロッパ(ドイツ、イタリア、スペイン、リヒテンシュタイン、ベルギー等)各地、各国で発表活動を行う
1991年より日本国内(東京、大阪、京都、岡山、熊本、丸亀、長崎、神戸等)での発表活動を再開
2017年末に帰国 岡山にアトリエを設け制作、日本を中心に各地で発表活動を行う。