アカデミズム 関 正和
誰か以前にもこのことに触れたと思うのだが、私の先輩が若い人を連れてきて、井上長三郎氏 に、「先生、何か絵について言ってあげて下さい」と頼んだ時、先生は「好きにやればいいんですよ。自分の思う通りにやればいいんですよ。」の一点張りだったのを覚えている。随分素っ気ない 返事だな〜今日は、気分でも悪いのかなと妙にその時の事が、印象に残っている。
私も、その時の先生の年齢になって、先生の気持ちがわかるような気がする。つまり、日本には アカデミズムがないということだ。アカデミズムというと、生き生きとしていない固苦しいものと 一概に受け取っている傾向があるが、その意味のアカデミズムではない。若い時仲間が集まって 話し合っていた時、「あいつは、アカデミックだな」と少し軽蔑の意味を込めて言った時、そばに居た井上先生が、「アカデミックは大切だよ」と言われたことを思い出す。
「いや、古くさくてカタにはまったものを、僕らの間ではよくアカデミックなと言う事があるんで すよ」と答えた事がある。今、アカデミックとは何かと聞かれても、私ははっきりということが出 来ない。だから人から美術について尋ねられても、ますます黙るようになるのかも知れない。つまり、単なる作画の技術とか、美術の歴史の事をいうのではない。何か、日本人にはわからない大き な骨格があるように思えてならない。この骨格がないと描いても描いても絵が出来ないという老年 になっての苦痛をみることになる。
しかし、この苦痛を味わう人はまだ、冷徹な頭脳の持ち主で、 大概は自分の持ち味とか、雰囲気で絵を作ってしまうことになる。そして、その時のエコールに 乗っかって行く事を繰り返すのだろうか。
関 正和 Seki Masakazu
1933 香川県丸亀市に生れる
1948 香川県展奨励賞受賞
1950 行動美術展入選
1952 自由美術展入選
1954 上京、井上長三郎先生に師事
1957 自由美術協会会員となる
1968 自由美術展自由美術賞受賞
1969 現代美術選抜展(文化庁)出品
1982 東京展賞受賞
1985 香川県展審査員となる
香川県文化会館に作品収蔵
1986 フランス、イタリア、スペイン、イギリス滞在
1992 香川県文化会館にて個展
1994 丸亀市立資料館にて個展
2001 Galerie Lichtblick(ベルリン)にて個展、ドイツ、オランダ、チェコ滞在
2016 丸亀市立資料館にて個展
2020 逝去
1982年以降「美術画廊たなか」にて個展多数開催、1996年以降は「美術画廊たなか」を引き継いだ 「あーとらんど ギャラリー」に於いて 個展・グループ展を多数開催