テキスト     筆塚稔尚

●私のアート
・ 私は感情や毎日の人の心の動きなど目に見えないものを見えるようにするために、そのヨリシロとなる形を選び、そして色を与えることで、視覚化しようとしています。

●作品の制作方法
「むらぎも−たが」シリーズはこれまでの版画と異なり、版の応用のしかたを変え「型」を心の器(形・型)になぞらえ、それぞれの感情や思いを色に現してオブジェとして制作しました。一点でも成立し、複数組み合わせても異なる表情が出るようにすべてオリジナル作品として制作しました。楮とパルプを混ぜたオリジナルの手漉き紙を漉き、新たな表現の素材として使用しています。紙を漉くには漉き簾と簾ゲタという「型」を器として使用します。これも一つの「型」で、広く言えば偶然にも「版」の範疇にはいるものなのが改めて面白い。

●現在発表している作品の考え方
・「棘」の作品について
誰でも気にしていないようで、実は人は人の間で生きている。刺さった棘だけでなく、知らず知らずのうちに人を刺している。言い方を変えれば、それは擦過傷のように少なからず人の心からそれは発し、人の心に届き影響を与えてる。受けた傷は記憶・経験として残りその人を強くし、思慮深くする。人とかかわるということは大なり小なりそんな擦り傷を負わせているものだと思う。

・「観」の作品について
風に音はなくまた、水に色はない。私はその気配を現すすべを私のやり方で常に試みるだけ。

・「むらぎも」の作品について
「むらぎも」は心の枕詞。こころは揺らぎ、時には優しく激しく現れる。時には傷つけ、傷つけられたと感じるもの。そしてその心は新たな意思として表れ、影響を受けて心に刺さる気持ちのかたち。そんな心の揺らぎをあえて形にし、自分と向き合うイコンを作ってみたかった。

●作品に込めらた意図・・・「むらぎも − 心のたが」
人は人の心といううつわのことをまだ何も知らない。特に自分の心を。心に向かい合うことは未知なる世界以上の挑戦と、それ以上に最後に残される冒険ではないだろうか。そんなことをこの震災と原発事故は人の心というものを日常は目に見えなかった形で気付かせてくれた。不安と希望、わだかまりと嫌悪、優しさとエゴ。普段は自分すら気付かなかった。行動することで知らない間に大人になっていく幼子。そして気付かされた心の「たが」。
知らなかった自分の心の「たが」に出会い、また、捨てて来た心の「たが」と遠い思い出のようにうっかり出会う。私という人と向き合うために毎日はあり、そしてそれと共に生きぬいていく。数千年以上も前から誰もがしてきたことだ。そして誰もが避けてきたことだ。

「むらぎも−TAGA」サイズ:各18X18cm 技法:楮とパルプの作家オリジナルの手漉き紙+顔料+鉄 制作年:2012 

筆塚稔尚 Fudezuka Toshihisa

1957 香川県生まれ
1983 東京芸術大学大学院 版画専攻 修了
1989–1990 カナダ政府給費留学 アルバータ州立大学(カナダ)
1990–1991 オタワ・スクール・オブ・アート 講師(ジャパン・カナダ・ファンド)
1999–2000 文化庁芸術家在外研修員として、クラコウ美術大学・ウッジ美術大学(ポーランド)

■ 画廊企画展
アート工房クアトラ(広島)・あーとらんどギャラリー(香川)・アートゾーン神楽岡(京都)・みさき画廊(大分)・ザ・トールマンコレクション(東京)・諄子美術館(岩手)・ヒロ画廊(和歌山)・柳沢画廊(埼玉)・養清堂画廊(東京)
ほか、国内外にて個展100回以上。展覧会の企画・運営を多数手がける。

■ 美術館企画展・国際展・グループ展・受賞
2023 「版とことば」展 ギャルリプチボワ(大阪)
2022 岡田まりゑ・筆塚稔尚 二人展 ヒロ画廊(和歌山)
   Seed Stories 展(2022– )
2020 「京都空想装丁室」展 アートゾーン神楽岡(京都)
2019 「コレクション+ギホウのヒミツ〈版画編〉」高松市美術館(香川)
   「Pianissimo」展 ビュランによる三人展 アートギャラリーミューズ(群馬)
2018 「冬の図書館」展 Gallery FUURO(東京)
   「西洋版画を視る―エングレービング:ビュランから生まれる精緻な世界」国立西洋美術館(東京)
   「秋の図書館」展 岩崎ミュージアム(神奈川)
2017 《プチボワ文庫》展 ギャルリプチボワ(大阪)
   CROSSPOINT 展 香川県ミュージアム企画展(香川)
2016 tribuna graphic 2016 クルジュ=ナポカ美術館(ルーマニア)招待出品
2014 Hangzhou Art Fair(杭州・中国)
2013 “world printmaking one” Mile End Art Pavilion(ロンドン・英国)
   “25 × 25:現代日本・オーストラリア版画”展(シドニー・オーストラリア)
2010 「日本現代版画展」ティコティン美術館(ハイファ・イスラエル)
2006 バハラート・バハマン国際版画ビエンナーレ(インド)招待出品

■ 収蔵先
滋賀県立近代美術館・宮城県立美術館・東京国立近代美術館・埼玉県立近代美術館・黒部市立美術館・塩釜市民図書館・大阪府立現代美術センター・カナダ・カウンシル(カナダ)・クリーブランド州立美術館(アメリカ)・大英博物館(イギリス)・ティコティン美術館(イスラエル)・クラコウ国立演劇大学(ポーランド)・ウッジ国立美術館(ポーランド)・パリ国立図書館(フランス)・ドレスデン州立美術館(ドイツ)・ほか