空想舞台のキャスト       綿引明浩

僕が作品を制作する時に欠かせないもの、それは子どもの頃のいたずら描きや、記憶の断片を閉じ込めたスクラップ帳です。このA3サイズの大きなスクラップ帳、今ではもう25册になりました。

ここには、何十年にも渡る僕のアイディアが詰まっています。そして実際の作品で、この中から生まれた不思議な人物が沢山登場します。僕は彼らをキャストと呼び、まるで舞台で演じる俳優の様に、場面ごとに配役します。のっぺらぼうの彼らは、見る人によって、どんな人物にもなる事が出来ます。この空想舞台の住人たちは、とても自由に演じ続けていきます。

いま日本は未曾有の大震災で苦しんでる人がいます。僕はアートが持つ不思議な力を信じています。作品は見る人の心に寄り添い、癒し、そして想像力をかき立てます。今までと同様これからも、僕はこうした力を試していきたいと思っています。

綿引明浩

大学院在学中に西武美術館版画大賞展で優秀賞を受賞、銅版画を中心に作家活動を開始する。1990年に透明アクリル板の裏面から描くオリジナル絵画技法・クリアグラフによる作品を発表。

2002年から約1年間、文化庁海外芸術研修生としてスペインに滞在。これまで全国各地のギャラリーで個展やグループ展を多数開催する。2013年に新島国際ガラスアートフェスティバルへの招待を受け、ガラス作品を制作するなど、ジャンルを超えて様々なメディアによる表現を展開する。