「個展に寄せて」 周 豪
又2年ぶりにあーとらんどギャラリーで発表させて頂く運びとなりました。 とてもワクワクな気分です。
昨年4月は ART SHANGHAI 2007、そして11月 は第11回上海アートフェアに参加の為、約八ヶ月間上海に滞在し、多くの油絵 と墨絵を制作しました。今回の個展は、新作は勿論のこと、上海での仕事の一 部も並べます。
実は今回の中国での制作は、アートフェアに向けて上海の画廊からぜひ油絵 を、という要望のためでした。しかし油絵は絵の具が乾くのに時間がかかりま す。その間にふと墨を使ってみたところ大変面白くなり、そのうちに大量の紙 を買い込み、どんどんと描いてしまい、気がつくと3500枚を越えていました。
自国の空気がそうさせたのか、自分の内側に脈脈とこんなにも墨と紙への渇望 が実は流れていたのか、と我ながら驚くほどでした。
至極当たり前のこととは思いますが、新しい領域の可能性に対する意欲は、 常に作家を駆り立てるものなのです。違う素材、違う手法、違うスタイル、様 々な関わり方の中で作家の感性は磨かれ、高められていきます。初期の版画の みの制作スタイルとは変わりましたが、表現したい、という本質は同じです。
今回の展示は敢てジャンルをしぼらず、それぞれの作品をを通してさまざま な周豪をご高覧いただけたら幸いです。
略歴・主要展覧会歴・収蔵先
1960年、中国・上海市に生まれる。6歳から高校までの約10年間を文化大革命の時代に過ごす。
1983年、私費留学のため来日。翌1984年、武蔵野美術大学造形学部油絵学科に入学。 3年次に新設された版画コースへ進み、同コースの第一期生としてリトグラフを学ぶ。 この時期から作品は次第に抽象的な表現へと変化していった。
同時期に柳宗悦の民藝思想に触れて感銘を受け、鈴木大拙の禅に関する著作などをきっかけに、 自国の古典文化を意識するようになる。 老荘思想の書物を繙く一方、日本および西洋の現代美術にも関心を寄せた。
1987年、小山敬三美術振興財団の奨学金を受け、 第1期アジア美術留学生として山梨県の白樺美術館で滞在制作を行う (東京吉井画廊協賛)。
1988年、武蔵野美術大学造形学部油絵学科版画コース卒業。 1989年、日本政府(文部省)奨学金を受ける。 1990年、武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻版画コース修士課程修了。
大学院修了後、東京・東麻布にあった益田祐作主宰の版画工房MMGに入社。 描版と刷りの仕事に携わりながら、自身の版画作品の制作・発表を続ける。 2003年に退社し、以後、作家活動に専念する。
2008年、2010年の二度にわたり、益田祐作の斡旋により、 フランスの Atelier Rémy Bucciali で銅版画を制作。 2016年、LOVEART – Summer Artists Residence Project に参加し、 イタリアで滞在制作を行う。
上海と横浜を拠点に生活し、制作活動を続けた。 日本と中国を中心に個展を開催するとともに、 国内外の国際版画展やアートフェアに参加した。
2023年9月、逝去。享年62。