原 博史 展
~ ノイズと混沌 ~

2026年 1月10日(土)〜  2月1日(日)

<1 階 企画展示室>
水曜~日曜 : 11:00 ~17:00
展覧会最終日: 11:00 ~16:00

休 廊 : 月曜、火曜

■ 作家在廊: 1月10日(土)、および 11日(日) 13:00~17:00 
■ ギャラリートーク: 1月 11日(日)午後2時〜
    「平面作品の可能性」をテーマにギャラリートークを行います。
    お気軽にお越しください。

<メッセージ>
制作の根源に「生命(inochi)」を据え、煤が生む偶然のフォルムを削ぎ落としながら、自然のリズムに呼応するエネルギーを生み出す。無意識と意識が共鳴し合う中、2025 年には、絵の具という物質を媒介に、生命の生成構造をより多層的に描き出す新たな探究が始まった。

artistname:原 博史 本名:谷川博史

1956年香川県生まれ。多摩美術大学油画専攻。ガラス、木皮など様々な素材での表現を実験。2003年より、手漉き和紙と墨(水墨画の技法)を用い「現象と行為」をテーマにミニマルな表現で制作。
また現在、制作において表現素材には拘らない。自己表現が内的必然性から生まれること、自己(我々の文化)と他者(異文化)の比較を重要と考える。
アートフェア東京(2008〜2010)Art HK(香港・2010)アート台北2012(台北・2012) Unbound Perspectives Exhibition(ニューヨーク・2012)かがわ・山なみ芸術祭(香川県・2013〜2019)など  展覧会多数。
【個展】
2024年「原博史展・海岸寺障壁画とともに」中津万象園丸亀美術館(香川県/丸亀市)、2023年 10月「原博史展×谷川博子展」あーとらんどギャラリー(香川県丸亀市)、2022年 「原博史1975〜2022展」アートエコーギャラリー(香川県/まんのう町)
2019年かまどホール(坂出市)2016年 Art Beatus HK(香港)、2012‛14‛〜 ‘17‘19’21年 あーとらんどギャラリー(丸亀市) 、2007, 08, 10, 15, 18年 ギャラリーなつか (東京/銀座、京橋) 、2008年 Art Beatus Van(バンクバー市)

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コンセプト : 原 博史

【手法について】
2015年より、墨の原料となる油煙から立ちのぼる煤を直接、和紙やキャンバスへ写し取る独自の技法を試みています。 この手法によって、極めて微細な粒子が持つ黒の深淵を表現することが可能となり、煤はまるで炎そのものを封じ込めたかのような形を浮かび上がらせます。
2022年からは、創作の根源的なテーマを「生命〈inochi〉」へと定め、制作を続けています。
煤が生み出す偶然の形態と、細やかな線のストロークによってそれを削ぎ落とす行為が、自然界のリズムに呼応するかのようなエネルギーに満ちた重層的なフォルムを生み出します。そこには、無意識と意識という二つの相反する力が共存し、ひとつの画面の中で共鳴しています。
そして2025年、これまでの表現に新たに色彩を加えることで、さらに多層的な生命の息づかいを探る段階へと進化しました。

【創作について】
私にとって「創造」とは、混沌の只中から立ち上がるものです。
そして「芸術」とは、世界に微細な揺らぎをもたらすノイズのような存在だと考えています。
ここ四年間、私は「生命」を主題の根底に据え、制作を続けてきました。
まずエスキースを通して構想を練り、描き始める前に一定のイメージを立ち上げます。しかし、十年来探究している独自の技法──炎を直接画面にあて、煤を焼き付けることで漆黒を定着させる方法──を用いると、焔の揺らぎが予期せぬ形象を生み出し、当初の構想とは異なる世界が姿を現します。
制作の過程では、偶然性に導かれながら多様な道具によって黒を削ぎ落とし、生命の気配を探り続けます。その中で初期のイメージはしばしば消え失せ、全く新しい形態へと変容したり、あるいは深化を経て再び姿を現したりします。私はこの過程の中で、混沌という迷宮に深く沈み込み、長い探究の末に新たな形態として浮かび上がる瞬間を迎えるのです。
芸術が社会の中で新たな世界を提示しようとする時、それはしばしば異質なものとして拒絶され、不協和音のように受け止められます。
しかし、個性が尊重され、それが新たな価値として認識された時、アーティストの微かな発見でさえも、次代を切り拓く力を持つのです。
ゆえに私は、芸術を「ノイズ」として象徴的に捉えています。
2025年、炎と煤による十年の実践を経て、ひとつの到達点を感じています。
絵の具をキャンバスの上で直接混ぜ合わせる行為は、「偶然」と「必然」、「無意識」と「意識」が交錯する創造の営みであり、それは煤を用いた表現と同質の本質を宿しています。 私の願いは、作品を通じて鑑賞する人々が、人間と宇宙との関係に思いを馳せ、自己の存在の奇跡的な重要性に気づき、「生命〈inochi〉」の尊さ、そして日常と自然との均衡の大切さを改めて感じていただくことです。